こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
最近、保護者の方との面談やご相談で、こんな言葉を耳にすることが増えてきました。
「子どもが“受験したい”って言ったら塾に通わせようと思っています」「本人の気持ち次第で…中学受験はやるかどうか決めようかなと」
一見、子どもの意思を尊重した、柔軟で見守り型の方針のように思えるかもしれません。
でも、塾講師・受験カウンセラーとしての本音を言わせていただくと──
「子どもが受験したいと言ったら受験する」は、かなり危険な考え方です。
なぜなら、それは中学受験という大きな選択を、まだ経験も知識も浅い小学生本人の“思いつき”に任せてしまうということだからです。
さらに問題なのは、そう言っているご家庭の多くが、まだ中学受験塾に通っておらず、受験に向けた情報収集や準備もほとんど始めていないことです。
中学受験は、想像以上に準備が必要です。
試験内容が特殊なうえに、求められる力も、小学校の学習とは異なります。
スタートが遅れると、本人のペースでじっくり力を育てていく機会が減ってしまうことがあるのです。
そして現場でよく見かけるのが、↓こういったご家庭の“あるある”な展開です。
小6の夏前、突然「受験したい」と言い出す
↓
周囲の友達が受験モードに入っているのを見て、焦って塾を探す
↓
初めて受けた模試で、学校のテストとは桁違いの難しさに衝撃を受ける
↓
親も子も不安になり、個人指導や家庭教師に駆け込む
受験までの時間にゆとりがない分、取り組みの質が下がってしまうことも。
私たちは、そんな「時間的なゆとりのない受験」をいくつも見てきました。
そして、何より辛いのは、なかなか成績が振るわないときに、親御さんが
「あなたが受験したいって言ったからでしょう」
と、責任をお子さんに押しつけてしまうケースです。
そうならないために──
この記事では、
「子どもが受験したいって言ったら…」
と迷った上で、6年生になってから取り組み始める中学受験の危うさについて、塾講師の視点から丁寧にお伝えしていきます。
ご家庭の教育方針をどう決めるか、どのタイミングで動くべきか。
ご家庭の大きな判断のヒントになることを願って、正直にお話しさせていただきます。
「子どもの意志を尊重したいんです」
という親御さんの言葉は、塾の現場で何度も耳にします。
これは、愛情や信頼の表れであり、親としてとても素敵な姿勢だと思います。
ただし──それが「中学受験するかどうか」の判断を、子ども本人にゆだねる理由になってしまっているとしたら、少し立ち止まって考えていただきたいのです。
そもそも小学生が「中学受験したい」と言うとき、その中身は決して“情報を吟味したうえでの意志決定”ではありません。
多くの場合は、
といった、目に映った部分的な魅力や、誰かが言っていたことに反応しているだけだったりします。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。
でも、その気持ちに乗って親御さんが
「じゃあ、受験しようか」
と即決してしまうのは、親としてあまりに短絡的です。
実際の中学受験は、想像以上に長くて、根気と体力と、時には親子の信頼関係すら問われる過程になります。
途中で
「やっぱり受験したくない」
「こんなに勉強するなんて思わなかった」
という気持ちになるのは、むしろ自然なことです。
問題は、そうなったとき。
「でも、あなたが受験したいって言ったよね?」
──この言葉は、たとえ一度でも口にしてしまえば、お子さんを深く傷つけることになります。
本来、小学生に「中学受験するかどうか」を決めるだけの判断力も、人生設計も備わっていません。
その段階で「自分のせいでこんな苦しい状況になっている」と感じさせてしまうのは、あまりにも酷な話です。
だからこそ、中学受験を
「子どもが言い出したらやるもの」
にしてしまうのではなく、
「うちはどうするか」
を親御さんが先に考えておくことが、お子さんを守ることにもつながるのです。
親が決める。
でも、子どもと一緒に丁寧に話し合う。
そのうえで「一緒にやってみようか」と進めば、お子さんも“受験させられる”のではなく、“一緒に頑張る”という気持ちを持つことができます。
6年生の夏ごろに、
「突然『中学受験したい』と言い出して…」
これは、実際によくある相談のひとつです。
春まではまったくその気がなかったのに、学校の友だちが塾の夏期講習で忙しそうにしているのを見て、あるいは、遊び相手がどんどん減っていくのを肌で感じて、
「やっぱり自分も」
と思うようになるのです。
親御さんとしては、「そこまで強く希望するなら」と背中を押してあげたくなりますよね。
ですが──このタイミングでの「受験したい」は、本当の意味での“覚悟”とは少し違うことが多いのです。
では、そう言い出した子たちは、その後どうなったのでしょうか。
ある男の子は、6年生の夏に
「受験したい」
と言い、急いで塾を探して中堅の中学受験塾に入塾。
初めて受けた模試では、偏差値が思ったより低く、本人はもちろん、保護者も衝撃を受けたそうです。
「学校のテストはいつも100点近いのに、どうして…?」
「こんなにできないとは思わなかった…」
ここで親子ともに焦り、個人指導や家庭教師に助けを求めるケースがよく見られます。
ただ、ここで注意したいのは──
中学受験の土台は、「知識」だけではなく、「積み上げてきた時間」も非常に大きな意味を持つということです。
思考力を問う問題、記述式の解答、制限時間内での読解力と判断力──
これらは、一夜漬けのような詰め込みでは到底身につきません。
もちろん、本人が真剣に取り組み、周囲のサポートが万全であれば、ある程度まで持ち上げることは可能です。
でも、そこには必ず「時間的なゆとりのなさ」や「基礎の不足」を埋めきれない壁が立ちはだかります。
結果として、秋〜冬にかけて成績が伸び悩み、本人の自信も失われがちに。
当初目指していた学校から志望校を変更したり、併願校の選び直しをしたり、あるいは直前で受験を取りやめる…
そんな選択をせざるを得なかったご家庭も少なくありません。
しかし、誤解しないでいただきたいのは、「合格できなかったことが悪い」という話ではないのです。
問題は──
「なぜあのとき、もっと早く、もっと冷静に判断できなかったのか」
と、後から親御さんが強く後悔されること。
そしてそれは、誰にでも起こりうるということです。
だからこそ、「やりたいと言ったら始める」のではなく、家庭の教育方針として、中学受験をするのかしないのか、きちんと決めるべきなのです。
中学受験をするならば、しかるべきタイミングで取り組み始めます。
中学受験をしないのであれば、
お子さんが友だちの影響で「中学受験したい」と言い出したとき、どこまで応えるのかを、決めておくとよいでしょう。
具体的に詳しく解説しましょう。
中学受験は、親の受験ではない。
けれど、「子どもが決めたことだから」とすべてを子どもに委ねてしまうのも違います。
では、どうするのが正解なのでしょうか。
それは──
「わが家は、こう考える」「こう進む」という、親としての教育方針を持つこと」です。
子どもにすべてを決めさせるのではなく、親が軸を持って、一緒に進む。
その姿勢こそが、結果的にお子さんの“安心”につながるのです。
たとえば、まだ小学生のうちに「受験するかどうか」「どの学校に行くか」「いつどれだけ勉強するか」といった判断を本人にゆだねるのは、冷静に考えれば無理があります。
本人にとっては、情報が足りず、経験もない中で、雰囲気や周囲の影響を頼りに意思表示しているだけ。
それを「本人が言ったから」と即座に受け取るのではなく、
「なるほど、そう思っているんだね。うちはどういう方針にしようか」
と、親の視点で考え抜き、家庭の軸としての“方針”を立てることが、なによりも大切です。
そして、ここでもう一つ大切なことは、方針は「やる」「やらない」どちらを選んでもいいということ。
「周りがやっているから」ではなく、「わが家にとってどうか」を判断軸に持つ。
これこそが、お子さんを焦りや不安から守る、大きな土台になるのです。
仮に「今は中学受験はしない」と決めたとしても、それは決して「何もしていない」わけではありません。
むしろ、たくさん悩み、調べ、家族で話し合ったうえで出した「立派な判断」です。
そしてその判断を、親御さんが誇りを持って伝えることができれば、
お子さんも周囲に流されず、落ち着いて日々を過ごすことができます。
さらに言えば、こうした“教育方針”は、受験の有無にかかわらず、お子さんの将来に大きな影響を与えます。
学校選びにしても、進路の方向性にしても、親子で対話しながら方針を立てる力があれば、高校受験、大学受験、あるいはその先の人生の選択においても、「選び方を知っている」親子になれるのです。
つまり、「親の方針を持つ」というのは、受験そのもののためだけではなく、
子どもの“選ぶ力”を育てるための土台でもあるのです。
中学受験をするかどうか。
それを“感覚”や“雰囲気”で決めるのではなく、「実際のところ、わが家にとってどうなのか?」を見極めるためには、やはり情報とシミュレーションが必要です。
そして、この「事前の情報収集」と「家庭に合ったシミュレーション」をしっかり行っているかどうかが、受験する・しない、どちらを選ぶにしても大きな安心材料になります。
まず、情報収集のポイントは主に次の4つです。
「中学受験」と一口に言っても、進学先には大きな違いがあります。
大学附属校・進学校・共学・男子校・女子校・一貫校・カリキュラムの特徴など、選択肢は非常に多岐にわたります。
志望校を「名前」や「偏差値」だけで判断するのではなく、
「その学校でどんな学びができるのか?」「どんな価値観が育ちそうか?」という視点で見ることで、
“わが子に合った学校”の輪郭が少しずつ見えてきます。
自宅からの通学時間は、毎日の疲れや生活のリズムに直結します。
片道1時間を超える場合は、起床時間・就寝時間・食事・習い事との兼ね合いまで具体的に想像してみましょう。
学校見学や文化祭に出かけてみるのもおすすめです。
実際の道のりを歩いてみると、「毎日通う」ことのリアリティがつかめます。
私立・国立・公立中高一貫校などで、必要となる費用は大きく異なります。
受験費用、入学金、授業料、交通費、寄付金、制服代、修学旅行など、受験期〜中高6年間のトータルで見てみましょう。
また、塾代や模試代など、受験準備にかかる費用も事前に把握しておくことで、想定外の出費に慌てることも減ります。
ごきょうだいの年齢や予定、ご両親のお仕事の繁忙期、介護や家族行事など、家庭全体のスケジュールも、中学受験には少なからず影響します。
たとえば下のお子さんがまだ小さい場合、送迎・勉強サポート・面談参加などを誰がどのように分担するかも含めて、
「わが家にとって現実的な体制はどこまでか?」
を確認しておくと、後のストレスが減らせます。
こうした情報をもとに、
「今このタイミングで、中学受験を選ぶことがわが家にとって最適なのか?」
をシミュレーションしてみましょう。
そして、出した結論が「今はやらない」だったとしても、繰り返しになりますが、それは「準備不足」ではありません。
むしろ、ご家庭でしっかり検討した結果出した、立派な教育方針なのです。
「しっかり考えて選んだ」ことが、あとからどんな進路を歩むにしても、迷いの少ない強さになります。
中学受験が、親子で挑む特別なプロジェクトだとしたら、その全貌を、最初からすべて一人で把握するのはとても難しいことです。
特に、ご両親ともに中学受験を経験していないご家庭の場合、
「どこから手をつけていいか分からない」
「情報が多すぎて、何が正解なのか見えない」
と戸惑ってしまうのは当然です。
実際、中学受験は高校・大学受験とは全く異なる世界です。
・小学生ならではの学習習慣
・家庭と塾の連携
・6年生後半の怒涛のスケジュール
・受験校の併願戦略や出願ルール
……など、大人でも初めて聞くような用語や仕組みに次々と直面します。
だからこそ、「ご家庭だけで抱え込まず、信頼できる外部サポートを活用する」ことが、大きな安心と成果につながります。
学力以外の“受験の土台”を整える取り組みも、実はとても重要です。
「塾に入れたから、もう安心」ではなく、
「わが家に必要なサポートは何か?」を考えながら、必要に応じて柔軟に組み合わせていく。
この姿勢が、中学受験をより現実的に、そして健全に進めていく鍵になります。
特に初めての受験では、不安や迷いがつきものです。
だからこそ、情報だけでなく「伴走してくれる第三者」がそばにいることは、とても大きな支えになります。
中学受験をするかどうかだけでなく、
どのような形で取り組むかも、家庭ごとに正解は違います。
他のご家庭と比べるのではなく、
「わが家のスタイルで、どう進めると安心か」を見つけていく。
その姿勢が、親子の心の安定にもつながっていきます。
中学受験は、ただの“合否イベント”ではありません。
そして、結果が出た瞬間にすべてが終わるわけでもありません。
それはむしろ、お子さんにとって、
自分と向き合いながら一歩踏み出す“初めての挑戦”であり、人生の“足がかり”となる経験です。
この数年間にわたる受験期を、親子でどう過ごしたか。
それは、進学先がどこであれ、お子さんにとって一生の糧となるプロセスになります。
そしてその経験は、親御さんにとっても「親としてのあり方」を見つめ直す貴重な時間になるはずです。
繰り返しになりますが、たくさん悩んだ結果、「わが家は受験をしない」と決めたとしても、それは“回避”ではなく“選択”です。
今、あなたが悩んでいることは、
「子どものこれから」に向き合っている証です。
どうか焦らず、どうか惑わされず、
ご家庭にとっての納得のいく選択を見つけてください。
私たちはいつでも、あなたとお子さんの味方です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
この文章が、少しでもご家庭の安心と前向きな決断のきっかけになればと、精一杯心を込めて書きました。
このブログの感想やお子様に関するモヤモヤ、お悩みなどをお聞かせください。
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学年途中での転塾は原則的に勧めません。
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