こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
「小学校に上がる前から、毎日プリント学習に取り組んできたので、計算は早くて正確なんです。
でも最近、算数の成績がズルズル下がってきていて……」
新学年に上がって3ヶ月。この時期、低学年の保護者様から特に多く寄せられるご相談です。
今回は、「計算は得意なのに、なぜか中学受験算数では得点できない」というお子さんに共通する特徴と、安定して得点力を伸ばしていくための考え方についてお伝えします。
「計算は速いし、ケアレスミスも少ない」
「プリント学習を毎日欠かさず続けてきた」
こんなふうに、小学校低学年のうちは「算数が得意」と見なされていたお子さんが、
中学受験に向けて学年が上がるごとに、つまずき始める——。
こうしたご相談を、私たちはこれまで数多く受けてきました。
実はこの“伸び悩み”には、共通する背景があります。
小学校の学習で求められる算数力と、中学受験で求められる算数力は、質が大きく異なります。
前者は「計算力」や「パターンの定着」が中心ですが、後者では、未知の問題を読み解く力や、図や表を使って『自分で考える力』が問われるようになります。
つまり、
計算は得意=算数が得意 ではなく、
計算が得意でも、考える力が育っていなければ、受験算数ではつまずく のです。
小学校低学年のうちは
「早く終わる」
「正解が多い」
ことで“できる”と評価されることが多いのですが、それが習慣化すると、「深く考えるより、早く答えにたどり着くことが良いこと」と子どもが誤解してしまうことがあります。
すると、文章量が多く、条件が複雑な中学受験算数の問題に出会ったときに、
問題文をちゃんと読まずに、自分の知っている“似た問題”に当てはめて解こうとするという傾向が出てしまいます。
これが、
「簡単な問題は解けるのに、応用になると手が止まる」
という状態を招いてしまうのです。
✔️ この章が教えてくれること
低学年からコツコツとプリント学習を続けてきたお子さんは、計算力や作業スピードにおいて、同年代の子どもたちよりも抜きん出ていることが多いです。
しかし中学受験の算数では、そうした“基礎の積み重ね”だけでは通用しない壁にぶつかることがあります。
プリント学習は、形式的・反復的なトレーニングに向いています。
「出題の形式に慣れる」
「一定のパターンで解けるようになる」
ことは、算数の土台づくりにはとても効果的です。
ただし、そこに”思考するプロセス”が含まれていないまま習慣化してしまうと、
未知の問題に出会ったときに、「パターンが見つからない」「どこから手をつけていいかわからない」という状態になってしまいます。
中学受験の算数では、与えられた条件を整理し、自分で考え、立式し、検証して答えを導くという力が問われます。
この力は、パターン練習だけでは育ちません。
もうひとつ見逃せないのが、プリント学習中心の子に多い読み飛ばしの癖です。
短文・定型の問題を繰り返す学習スタイルでは、
「設問文を読まなくても、問題を見れば何をすればいいか分かる」
という感覚が染みついてしまいがちです。
すると、文章量の多い受験問題になると、途中まで読んで“これはあのパターンだ”と決めつけてしまうというミスが頻出します。
実際に私がご支援したご家庭でも、
「この子、問題文の“条件”を読まずに答えてるんです…」
「見直しをしても、なぜか間違えた箇所を修正しない」
という悩みは非常に多く寄せられます。
これは、「算数のセンスがない」わけではなく、
学び方のパターンに偏りがあることで、“考える習慣”が育っていないのです。
✔️ この章が教えてくれること
中学受験の算数で得点できる子は、必ずしも「大量のプリント学習をこなしてきた子」ではありません。
むしろ、頭の中で場面をイメージできる子、自分の言葉で状況を整理できる子が、文章題や図形問題、応用問題で伸びていく傾向があります。
では、その「考える力」は、どこで育つのでしょうか?
答えはシンプルです。
“体験”の中で育ちます。
たとえば、長さの問題。
「1mが何cmか」は知識として覚えられますが、
巻き尺を使ってテーブルの横幅を測った経験がある子と、ない子では、
「○m△cm」といった単位の感覚に大きな差が出ます。
また、
「Aくんが1周80mのトラックを3周走った」
「Bくんは1周120mを2周走った」
——どちらが長く走った? といった問題も、
実際にトラックや公園を走ったことがある子であれば、
「80mってこのくらいか」
「3周するとこんなに遠いのか」
と、イメージが湧きやすいのです。
同じように「重さ」も、
米1kgを袋から出して持ってみる。
野菜や果物をグラム単位で買って重さを実感する。
こうした経験を通して、単位と現実がつながります。
つまり、知識はインプットできても、
“概念”は体験なしには定着しないのです。
図形問題や速さの問題、つるかめ算などの特殊算も同様です。
抽象的なルールをそのまま覚えるのではなく、「なぜそうなるのか」を自分の中で再現できる子は強い。
どれも、暮らしの中で感じたり考えたりしたことがある子は、式に説得力が宿ります。
中学受験の問題が、「大人から与えられた問題」ではなく、
子ども自身が『納得しながら答えを出していくプロセス』を求めているからです。
「中学受験対策=机の上でプリント学習」と思ってしまうのは、もったいないことです。
“考える力”は、暮らしの中で培われるもの。
・野菜の重さを計る
・水をコップに注ぐ
・ベランダで洗濯物を干しながら影の動きを観察する
・道順を地図で調べながら買い物に行く
・時間を計ってトランプの神経衰弱をしてみる
こうした日常の中の“学びの瞬間”を見逃さず、親子で言葉にして共有していくことが、実は中学受験の算数にもつながっています。
次章では、こうした“体験ベースの学び”をどのように日々の生活に取り入れればよいのか、低学年のうちに取り組める、2ndスクールオンライン流「体験×算数」アプローチをご紹介します。
この章が教えてくれること
低学年のうちは、机上の問題演習よりも、五感を使った体験を通して学ぶことのほうが、ずっと大きな意味を持ちます。
中学受験の算数で得点できる子に共通するのは、
「状況をイメージできる力」と「ことばで説明できる力」です。
2ndスクールオンラインでは、プリントを解く前に、まず体験することを大切にしています。
では、どんな体験が、算数のどんな力につながるのでしょうか?
ここでは、実際に行っている「体験×算数」の指導例をご紹介します。
小学2年生で学ぶ「かけ算」は、プリントでは九九表を暗記するところから始まることが多いですが、2ndスクールオンラインでは
「配る」「並べる」実体験
から入ります。
例)「チョコレートを3つずつ、4人に配ると全部でいくつ?」
実際におはじきやブロックを使って、目の前で配ってみます。
生徒さんが手を動かしながら、
といった疑問を自分で持ち、自分のことばで説明するプロセスが大切です。
その後、同じ状況を絵や図で整理し、最後に「3×4=12」という式にたどり着く。
この流れがあると、九九の丸暗記ではなく、意味と体験を伴った理解に変わります。
※九九の暗記も、別の意味で大切ですので、もちろん取り組みます。
図形は「センス」と言われることがありますが、そのセンスも経験の積み重ねです。
たとえば、展開図や立体の問題。
2ndスクールオンラインでは、紙を折る・切る・貼るといった工作的な要素を取り入れて指導しています。
こうした操作体験を通じて、図形を頭の中で回す力=空間認識力がぐんと育ちます。
図形は特に、体験の有無が得点差につながりやすい分野です。
中学受験の算数で最も差がつくのは、文章題(条件整理・特殊算)です。
でも低学年のうちからいきなり文章題を解かせても、多くの子どもは「何をすればいいのかわからない」となってしまいます。
そこで、2ndスクールオンラインでは、
という物語としての読み解きから始めます。
生徒さんと一緒に登場人物を指で追い、声に出して読み、ときには絵も描きます。
このプロセスを丁寧に積み上げることで、「読む→考える→解く」の流れが身につくようになります。
そして、少しずつ「つるかめ算」や「過不足算」などの特殊算にも、無理なくつなげていくことができるのです。
✔️ この章が教えてくれること
低学年のうちに育てたい“算数の土台”は、
「計算力」や「公式の暗記力」だけではありません。
むしろこの時期に大切なのは、
といった「根っこ」のような力です。
ここでは、特別な教材や指導がなくても、日常生活の中で親子でできる“算数の土台づくり”をご紹介します。
お買い物や料理は、数量や単位、割合の感覚を育てるチャンスです。
このように、生活の中に“算数っぽい問い”を混ぜていくだけで、算数を「自分ごと」として捉えられるようになります。
ポイントは、『正解すること』より『考えるプロセス』を一緒に楽しむことです。
お子さんが「わからない」と言っても大丈夫。
「一緒にやってみよう!」という声かけで十分です。
算数に限らず、思考力を育てるうえで欠かせないのが、「問いかけ」と「対話」です。
こうした問い返しを、普段の会話の中に少しずつ取り入れてみましょう。
お子さんが自分の考えを言葉にすることで、
「思考と言語の往復運動」
が起き、考える力の筋トレになります。
このように、遊びの中にも算数的な要素はたくさんあります。
ポイントは、「遊び=勉強」ではなく、
「遊びの中で育っている力に目を向ける」ことです。
「これは○○に似てるね」
「さっき学校でやったのとつながるかも」
そんな一言が、お子さんの“学びの自信”を育ててくれます。
低学年のうちは、
間違いを責めない・急がせない・比べない
が鉄則です。
プリントの正答率よりも、
こうした“プロセス”を認めてあげる声かけが、
子どもの「自分で学ぼうとする力」を引き出します。
「どうしてここ間違えたの?」ではなく、
「ここまで考えられたね」
「この考え方、おもしろいね」
といった対話を楽しむようなフィードバックを心がけてみてください。
✔️ この章が教えてくれること
算数が好きな子はもちろん、
「苦手意識がある」「考えるのが面倒くさい」と感じている子も、
環境と関わり方次第で、必ず伸びます。
「センスがないから無理」と諦めてしまうのは、あまりにも早すぎます。
中学受験の算数は、
“たったひとつの正解”を求めるものではなく、
いくつもの解き方と、その思考の工夫を楽しむ世界です。
だからこそ、
「今日も1問、昨日より深く考えられた」
そんな1歩1歩を、親子で一緒に喜べる時間にしてほしいと願っています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
ただの受験対策ではなく、
子どもの思考力を育てる日々の関わりのヒントとしてお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
もし、家庭内だけでは難しいと感じられることがありましたら、どうかひとりで抱え込まずにご相談ください。
2ndスクールオンラインでは、
月1回の保護者カウンセリングつきオンライン個人指導で、お子様の学びとご家庭のコミュニケーションをサポートしています。
なお、学年途中での転塾は原則としておすすめしておりません。
現在お通いの中学受験塾のカリキュラムを尊重しながら、
集団授業では理解を深めにくい単元を、1対1で丁寧に指導いたします。
お通いの塾と併用する形で、ご利用ください。
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