今回は、新4年生〜新6年生のお子さんをもつ親御さんへ向けて、中学受験で求められる「答案再現性」について解説します。
低学年のお子さんは、いまはまだ「十分学びを楽しむ時期」ですので、直接関係はありませんが、いずれこのようなことが求められると知っておくのは、良いことでしょう。
ぜひ最後までご覧ください。
「再現答案」ではありません。
模試や入試本番におけるテストにおける「答案再現性」です。
「答案再現性」とは、模試や入試本番において、授業で学んだ知識を複数組み合わせて、自力で問題を解いていける力のことをいいます。
例えば、
列車Aと列車Bが平行に敷かれた線路の上をそれぞれ走っています。
列車Aの長さは列車Bの長さより42m短いです。
次の問いに答えなさい。
列車Aが車庫に入るために速度を落として時速21.6kmで走ったとき、停車している列車Bを完全に追い抜くのに33秒かかりました。
列車Bの長さは何mですか。
(2024年 早稲田中)
単元としては「通過算」と「和差算」です。
(1)通過算において「完全に追い抜く」場合の距離は、列車Aの長さ+列車Bの長さとなる という知識
(2)「時速21.6km」と「33秒かかりました」、そして「何mですか」それぞれ単位が違うため、時速kmを秒速何mに変換して解く必要がある という知識
(3)1時間=3600秒 という知識
(4)1km=1000m という知識
(5)列車Aの長さは列車Bの長さより42m短い という条件から和差算を使って列車Bの長さを解くという知識
(6)速さ、時間、距離 に関係する知識
(7)小数の計算知識
ざっと見ただけで、これほどの知識が必要です。
ひとつひとつの知識を「知っている」だけでは解けません。
「知っている」は、知識の引き出しに入っているだけです。
入試本番では、それをお子さんが自分で引き出しを開け、出してきて「使う」必要があるのです。
これを「答案再現性」といいます。
中学受験において、非常に重要なスキルです。
ではいったい「答案再現性」を高めるには、どうしたらよいのでしょう?
それには3つのステップがあります。
①基礎知識の理解
②繰り返し演習する
③テストは必ず誤答を分析
です。
ひとつひとつ見ていきましょう。
①基礎知識の理解
用語を「知っている」だけでは、「使う」ことができません。
「知る」よりももう少し深く、「理解する」ことが必要です。
塾から帰ったらすぐに、その日のテキストを開いて読みます。
そして、ご家族にその日の授業で何を習ったのか説明します。
(ただし、楽しく!がポイントです)
お忙しいかもしれませんが、親御さんは仕事や家事の手をちょっと止めて
「へぇ〜 そうなんだ!」
と、うなずきながら好意的関心を持って話を聞いてあげてください。
親御さんの「聴く力」が試されるときです。
聴き方が上手だと、お子さんの口からスルスルと言葉が出てきます。
1教科5分✖️4教科=20分
夕食を摂りながら、一緒にお風呂に入りながら、そんなシチュエーションでもOKです。
塾から帰ってすぐの、この20分の取り組みが、大きな力になります。
②繰り返し演習する
塾に行かない日は、塾に行っている日と同じ時間帯に学習します。
塾の宿題は、授業の復習を兼ねているはずです。それらを毎日少しずつコツコツと取り組みましょう。
中学受験における学力向上は、演習量と比例します。
お子さんの負担にならない量(これが重要!)と難易度の問題を毎日取り組むことが大切です。
宿題を、塾へ行く日の前夜にまとめてやろうとするのは厳禁。
ましてや、親御さんがガミガミ叱りながらお子さんにやらせるのは言語道断です。
お子さんがなかなか学習に取り組まないことが悩みの種 というご相談をよく受けます。
お子さんが学習を開始するのには、ある「儀式」が必要です。
「勉強しなさい」
と言うのではなく
「何時から勉強をはじめる?」
と問いかけて、勉強開始の時間をお子さんに決めてもらいます。
そして、その時間になったら黙って該当するテキストを広げ、黙ってお子さんに鉛筆を手渡します。
「言葉」ではなく「親御さんの行動」でお子さんの行動を促すことが重要です。
③テストは必ず誤答を分析
テストの答案が戻ってきたら、必ず誤答を分析します。
A うっかりミス
B 解法を見たら解けた
C さっぱりわからなかった
AとBは必ず丁寧に解き直しをします。
②の繰り返し演習の中に盛り込んでもよいですね。
「あー 惜しかったね!」
と誤答をお子さんと一緒にに悔しがり、
「解答解説をみればわかっちゃうなんて、すごいね!」
と褒めながら進めます。
Cの誤答は、家庭での解き直しはおすすめできません。
塾の授業を異なる解法を教えてしまうと、お子さんが混乱してしまうからです。
この場合は、塾の先生に相談してください。
解答・解説に沿って、親御さん教えることができればよいですが… 大抵の場合親子喧嘩に発展してしまうので、良い結果を産まないことが多いようです。
これらの①〜③をぐるぐる回しましょう
このような取り組みを始めたとしても、すぐに結果がでるとは限りません。
どちらかというと、得点や偏差値に反映するまで、それなりの時間がかかるものです。
とにかく親御さんが焦らないことが重要です。
お子さんは、年齢とともに成長していますし、日々の学習で学力も確実に上がっています。
親御さんが焦ってしまい、お子さんのできないことを責めたりしては、学力向上は見込めません。
それどころか、勉強がきらいになる という、中学受験において一番避けたい状況に陥ってしまいます。
中学受験に伴走する時は、お子さんの様子を見ながら、「お子さんを勉強嫌いにさせない!」というミッションを常に忘れないようにしてください。
人は誰でも、
もっと知りたい
もっとできるようになりたい
という心を持っています。
お子さんの成長を信じて、親御さんも一緒に学びを楽しんでください。
私たちも心から応援しています。
答案再現性を高める取り組みは、コツコツ積み上げていくものゆえに、長丁場となりますし、親子ともそれなりの忍耐力が必要となります。
その土台となるものは、やはりご家庭での学習環境です。
中学受験は、ご家庭と塾や家庭教師が両輪となって、お子さんを支え進めていきます。
両輪は、同じサイズ(サポートの度合い)、同じ形(サポートの方向性)が望ましいですが、それぞれ役割は異なります。
ご家庭には特に、下記3つをサポートしていただきたいです。
①ポジティブな姿勢を保つサポート
②物理的な学習環境整備
③食事、睡眠、適度な運動
①ポジティブな姿勢を保つサポート
大手塾の授業は、良い意味での「戦場」。他者との競争の連続です。
小テストの成績で席順が変わるなど、クラスメイト同士で競い合い、切磋琢磨する場所ですので、ときにはお子さんが悔しい思いをするシーンもあります。
ご家庭は、いつ、なんどきでも「お子さんの味方」「安心できる場所」でいてください。
例えば漢字の小テストで、ちゃんと学習していて全て書けたのに、正しく「とめ」「はね」「はらい」が出来ていないことで減点され、結果0点だったとします。
(中学受験塾ではよくあることです)
返却された答案を見たら…お子さんは心底がっかりです。
帰宅したときに
「あら、0点じゃない! 字が汚いからよ! だからいつも言っているのに!」
などと叱られてしまっては、傷口に塩を塗るようなものです。
「えー?! 0点なの?! お母さんだったら、マルをあげちゃうけど… でもさ、漢字はわかっているんだから、あとは丁寧に書くだけだね!」
お子さんの悔しい気持ちに寄り添い、応援する声をかけてあげられるのは、親御さんだけなのです。
(塾の先生もそうしてあげたいと思っていますよ。でも職務上それはできません。)
②物理的な学習環境整備
ご家庭内に、整頓された学習スペースと静かに学習に取り組める時間帯を確保します。
(子ども部屋の机ではなくリビング学習がおすすめです)
また取り組むべき宿題はどのページなのか、明確にわかるように付箋をつけるなどのサポートも、できれば親御さんにお願いしたいです。
学習前に鉛筆を削る。
消しゴムが小さくなったら、外側の紙ケースを適当な大きさに切る。
これらも親御さんがサポートしてください。
ただし、必ずお子さんに
「お母さんが鉛筆を削ってもいい?」
と声をかけてください。
小学校高学年になると、「自分のもの」という意識が高くなりますので、お子さんに無断で筆箱を開けるのは、好ましくありません。
必ず一声かけましょう。
③食事、睡眠、適度な運動
栄養バランスの整った食事と十分な睡眠は、受験生にとって最も重要な環境といえるでしょう。
特に、宿題が終わらないからと睡眠時間を削って勉強するのはいけません。
宿題を出す塾側も、睡眠時間を削ってまで取り組むことを望んではいません。もしそのような状況になってしまったら、いまのお子さんにとってその宿題は適切ではないということです。早急に塾の先生に相談しましょう。
また、小学生が学校、家、塾の往復だけというのは、お子さんの成長にマイナスです。
近所を散歩する、なわとびやキャッチボールなど、適度に身体を動かすことが、お子さんのメンタルフォローと学力向上につながります。
「勉強の合間に息抜きで運動する」
ではなく、受験直前期以外は
「適度な運動の合間に勉強する」
という配分です。
拘束時間が長くないものであれば、スポーツ系の習い事を、受験直前期も継続することをおすすめします。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
私にできることが、少しでも皆さまのお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
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