こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
「塾には通わせず、通信教材だけで中学受験できますか?」 というご相談が、ここ数年でぐっと増えています。
通信教材だけで中学受験ができるのかーー。
その問いに対する答えは、簡単ではありません。
実際、「塾なし」で志望校に合格したご家庭もあります。 一方で、
「思うように進まなかった」
「親子喧嘩が絶えず、子どもが家で暴れて手に負えなくなり、途中で受験を諦めた」
と語る方々もいます。
なぜ、同じ“塾なし受験”という選択なのに、結果がこんなにも違ってしまうのでしょうかーー?
このブログでは、
・なぜ「塾なし中学受験」を検討するご家庭が増えているのか
・成功したケースと、そうでなかったケースにはどんな違いがあったのか
・塾なし受験を検討するなら知っておくべき“分岐点”とは何か ──
これらを、体験談をもとにリアルにお伝えしていきます。
「できることならば、うちも塾なしで。」 そう思っている方にこそ、読んでいただきたい内容です。
昨今、「塾なし中学受験」が注目される理由は、大きく3つあるでしょう。
① そもそも「中学受験」を意識する人が増えた
② 中学受験に取り組む方法が多様化している
③ 子どもの教育費に対する経済的な影響
ひとつずつ見ていきましょう。
2020年3月2日(月)からの一斉休校。翌月は例年であれば入学式や始業式が行われて、新学期が始まるはずの4月7日から緊急事態措置が取られ、さらにそれが延長されて、約3ヶ月も子どもたちが普通に学校に通えない期間が生じました。
この期間において、多くの私立学校がビデオ通話ツールを用いて授業やホームルームを行った一方で、公立学校は、プリントの配布による課題提出にとどまったケースが多かったのです。
特に、中学生には高校受験や大学受験が控えています。コロナ禍を経て、私立中学校と公立中学校の対応の違いが浮き彫りとなり、保護者の意識が私立中学へ向くようになったのは事実です。
そうすると、いままで地域の公立中学校へ進学する予定だったご家庭が、中学受験を検討し始めます。
さらに、このように小学校のクラスで中学受験のことが話題になる機会が増え、いままでは中学受験のことを全く意識していなかったご家庭も「子どもの友だちが中学受験をするらしい」と、間接的に中学受験を意識し始めます。
2023年首都圏模試センター発表のデータによると、2019年度(6年生で一斉休校を経験した学年)の中学受験率は16.04%、2023年度は17.86%と、右肩上がりに増えています。
これは首都圏模試センターのデータであり、このデータの母数に入っていない中学受験生も相当いると思われます。
私の体感では、東京都の文京区、中央区、港区、渋谷区の中学受験者が多いとされる公立小学校では、「周りが受験するから、うちも公立中高一貫校に出願してみた」という方々も含めると8割近くが中学受験に取り組んでいるのではないでしょうか。’
中学受験を意識するようになった方々の中には、自宅の近くに中学受験塾が無い方も多くいらっしゃいます。 中学受験に取り組む方の中には、期間を決めて大手中学受験塾の近くに住まいを借りる方もいらっしゃいますが、稀なケースでしょう。小学生の通塾ですし、多くの塾は、授業が21時まであります。
ご家庭において「できること」の範囲で中学受験に取り組むとしたら、通信教材を使っての中学受験を検討するのは、自然な流れと言えるでしょう。
中学受験者数の増加を受けて、いままで公立中学進学者を対象としていた進研ゼミが、中学受験講座を設けたり、コロナ禍におけるオンライン授業ノウハウを活用して大手塾が中学受験向けオンライン講座を開設したりと、中学受験に取り組む方法が、大手中学受験塾の通塾一択ではなく多様化していると言えます。
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物価高は、子育て世帯の家計を圧迫します。当然、子どもの教育費にも影響を与えるのです。
一般的に、大手中学受験塾の通塾代は、6年生で年間100万円以上かかると言われています。
子どもには、他の子と同じことを体験させたい。でも教育費が抑えられるのであれば、その方法も模索したいという考えのご家庭が増えるのは自然なことです。
このような理由で、「塾なし中学受験」が注目されています。
次の章では、「塾なし中学受験」を体験した2つのご家庭のリアルな体験談をお伝えします。
Hくん 二人兄弟の長男/両親共働き/東京都中央区在住
小学4年生の4月から通信教材の中学受験講座を受講
「Tくんも来週から塾に行くんだって。遊ぶ友だちがいなくなっちゃった。」
4年生になったばかりの頃、夕飯をとりながらHが少し寂しそうにつぶやきました。
Hが通う小学校では中学受験をするご家庭が多いと聞いていましたが、一番仲の良いTくんが塾に通うようになるとは…。Tくんのお母さんからそんな話は何も聞いていなかったので、思いがけず胸がザワつきました。
——中学受験しないのは、うちだけ?
そんな思いが、心の中にじんわりと広がります。
Hは、特に家で勉強していなくても、学校のテストはほとんど満点。クラスでは「勉強ができる子」として認識されています。Tくんが受験するなら、Hだって受験できるのでは? そんな気持ちが芽生えたのです。
「もしかして、Hも中学受験してみたいと思ってる?」
「え? いいの?」
ぱっと顔を輝かせるHの様子を見て、私も嬉しくなりました。
「いいよ! でもね、弟のKちゃんはまだ1年生だし、お母さんは夜遅くまで在宅勤務があるから、塾の送迎はちょっと難しいの。代わりに、通信の中学受験講座っていうのがあるんだけど、やってみる?」
「うん! がんばる!」
ところが——。
教材が届いて、私もHも目を見張りました。
国語も算数も、小学校でまだ習っていないことばかり。
特に国語の読解問題は大人顔負けの長文と難解な設問。語彙のレベルも高く、漢字の量にも驚かされました。
「これが中学受験なの…?」
Hは一見楽しそうに取り組み始めたものの、すぐに苦戦を始めます。
私のところへ来て、「これ教えて」と頻繁に尋ねてくるようになりました。
でも私は、リモートワークで会議中だったり、納期に追われていたりする毎日。
下の子の世話もある。Hが何度も「ねえ、教えて」と来ることに、だんだんイライラするようになってしまいました。
「なんでも簡単に聞かないで。ちゃんと自分で考えたの? 通信教材には質問フォームがあるんだから、そっちで聞いて。お母さん、いま仕事中だから!」
つい、冷たい声で突き返し、ドアをバタンと閉めてしまいました。
しばらくして、Hは私のところへ「教えて」と言いに来なくなりました。
正直、私はホッとしていました。忙しかったし、下の子にも手がかかっていたから。
ところがある日、ふとHの部屋に入ると、タブレットの画面は真っ暗。電源も落とされたまま。
学習アプリの通知は、何週間も未開封のまま。学習履歴を確認すると、しばらく何も進んでいないことがわかりました。
——これは一体、いつから?
パニックになって、帰宅したHを問い詰めました。
「どうしてやってないの!? あれは塾より安いかもしれないけど、タダじゃないのよ?」
「お金を払ってるのに、それをムダにするなんて、お母さんは許せない」
「Tくんは、夜遅くまで塾で頑張ってるのに。あなたも“受験したい”って言ったじゃない!」
「言い出したのは、あなたでしょう? 最後まで責任を持ちなさいよ!」
次々と言葉が溢れ出して、自分でも止められませんでした。
「そんなんじゃ、将来ロクな大人にならないよ…!」
——バンッ!
Hがタブレットを床に叩きつけて、泣きながら叫びました。
「ぼくには無理だよ、中学受験なんて!」
その日を境に、Hは学校に行かなくなりました。
2階の自室にこもりきりで、食事の時間になっても降りてきません。
私は、食事をトレイに乗せて、そっとドアの前に置くようになりました。
Hはいま高校2年生の年齢です。
公立中学校は卒業しましたが、ほとんど通えないままでした。
思い出してください。
あなたのお子さんは、学校の宿題を、自分からコツコツ取り組めていますか?
多くの小学生は、親に「宿題やったの?」と声をかけられて、ようやく机に向かうのが現実です。
それでも何とかできるのは、内容が比較的易しく、そして学校というリアルなコミュニティに提出する「締切」があるからです。
通信教材には、それがありません。
だからこそ、通信教材で中学受験に挑むためには、通塾以上に、親御さんが環境を整え、毎日の学習を支える必要があるのです。
次章では、塾なし受験でうまくいったご家庭の工夫と実践例をご紹介します。
Mさん 一人っ子/両親共働き/東京都世田谷区在住
小学3年生の2月から通信教材で中学受験に挑戦
「うちの子、習いごとがいくつかあるので、いまから塾に通うのは正直むずかしくて。でも、中学受験そのものは前向きに考えているんです。通信教材で、どこまでできると思いますか?」
私が最初にMさんの保護者の方からご相談を受けたのは、Mさんが小学3年生の終わりごろのことでした。
Mさんは、ピアノとスイミングに通っており、週に複数回の習いごとに加えて、学校の宿題や行事もある多忙な毎日を送っていました。
それでもご両親は、
「娘が『中学受験をしてみたい』と話していて、できる限り応援してあげたい」
とおっしゃっていました。
ただし、いまの習いごとを続けながら、さらに塾に通うのは現実的に難しい。時間も体力も足りません。
そこで選択したのが、通信教材を軸にした“塾なし受験”というスタイルでした。
まず最初に取り組んだのは、学習の「習慣化」でした。
「時間があればやる」ではなく、「時間がきたらやる」というルールを、家族全員で徹底しました。
気分や予定に左右されず、“毎日やるのが当たり前”という感覚をつくれたことが、通信教材の継続に大きく貢献したそうです。
Mさんはこう話してくれました。
「お母さんは、“朝ごはん、全部食べてくれてありがとう。はい、これ今日の分”って、教材のページを開いて鉛筆を渡してくれるの。
私も“はーい”って元気に受け取って勉強を始めるの。これで良い1日が始まるって感じが好き。」
「習いごとに行くときは、“歴史の年号暗記ソング”や“理科実験ソング”を、お母さんと一緒に車で大声で歌って、あっという間に覚えちゃった。」
「夜はね、1日の総復習。ノートを閉じる前に、天井の向こうの宇宙に向かって“今日も1日がんばった!明日も良い日になりますように!”って叫ぶの。
これ、お母さんが教えてくれたおまじないなの。ほんとに明日もいい日になりそうでしょ?」
Mさんが使っていたのは、タブレット型の通信教材でした。
アプリ上で学習の記録が色分けされ、進捗が一目でわかる仕組みです。
Mさんのご両親は、毎晩の学習後に必ず娘さんと一緒に画面を確認し、
と、労いの声かけを続けていました。
さらに、月ごとの単元表を印刷してリビングに貼り出し、進行状況を“見える化”して、家族全員で共有。
Mさんはこう言っています。
「お父さんはね、この表を見てやたらと“すごい、すごい”って頭をなでてくれるの。
もう小さい子じゃないのに!と思ったけど、でもやっぱりちょっと嬉しかった。」
きっとMさんにとって「やらされている感」は、ほとんどなかったのでしょう。
それよりも「家族に応援されている」という安心感が、モチベーション維持につながったようです。
また、声かけの中身が「点数」や「順位」ではなく、「日々の努力」や「積み重ね」を評価するものであったことも重要なポイントです。
通信教材だけで中学受験に挑戦する場合、どうしても出てくるのが「わからないとき、どうするか」という問題です。
Mさんご家庭では、春・夏・冬の長期休暇中に、オンラインの個人指導を1週間単位で導入。
さらに、外部生が受験できる大手塾の模試も積極的に活用していました。
これらは外部の先生にお任せ。
家庭では、学習ペースを整えることと、心と身体の健康サポートに集中する。
Mさんのご両親はこう語っています。
「通信教材は、“何をやるか”は示してくれますが、“どうやるか”までは教えてくれません。
そこは外部の力を借りました。オンライン授業の後に15分ほど、先生と会話するこの時間が、親である私自身のメンタルサポートにもなっていました。」
結果として、Mさんは第一志望の私立中学校に合格しました。
しかし、ご両親が「中学受験をしてよかった」と感じた理由は、合否ではありません。
「娘が“自分で計画を立てて、毎日取り組む”という力を身につけたこと。これが最大の成果です。」
「私たち親も、“教える”のではなく、“支える”ことに徹する姿勢を学びました。
今では、親子というより、“受験をともに戦ったチーム”のような関係です。」
合格という結果以上に、家族の信頼関係や“学びの習慣”という一生モノの財産を得ることができます。
次の章では、この2つの体験談から見えてきた“塾なし受験”の分岐点を整理していきます。
明暗を分けたポイントは、一体どこにあったのでしょうか?
塾なし中学受験に挑戦した2つのご家庭。ひとつは途中で頓挫し、もうひとつは成功につながりました。
どちらのご家庭も
「子どもの意思を尊重したい」
という気持ちは同じだったはずです。
では、どこに分かれ道があったのでしょうか?
ここでは、2つの体験談から見えてきた“塾なし受験の分岐点”を3つに整理してお伝えします。
通信教材は、「塾よりも安く、家庭のペースで学習できる」という魅力があります。
けれど、その自由度の高さが、かえって継続の難しさにもつながるのです。
教材が届いたまま手つかず。
タブレットを開く時間がどんどん減っていく。
「やらなきゃ」と思いながらも、行動に移せない。
——これは、決して子どもが怠けているわけではありません。
大人でさえ、「自由にやっていいよ」と言われると、かえって続けるのが難しくなったりしますよね。
だからこそ、最初に必要なのは「学習の習慣を支える仕組み」です。
✔ 毎日決まった時間に学ぶルールがあるか?
✔ 親子で進捗を共有できる“見える化”ができているか?
✔ 声かけや励ましが“プロセス”に向いているか?
Mさんのご家庭のように、「朝学習→移動中の暗記→夜の復習」まで日常のリズムに組み込むこと。
さらに、月間予定表をリビングに貼り出すことで、学習が“家族みんなのプロジェクト”になるような工夫が、子どもの自走力を支える土台になります。
塾なし受験で意外と見落とされがちなのが、質問環境の確保です。
通信教材の多くは「質問機能」をアピールしていますが、小学生が自分で疑問点を文章化し、端末を使って質問を送るのは、実際には非常にハードルが高いのです。
しかも回答には数日かかることもあり、「もう次に進んでいる」「結局、解決できなかった」ということも少なくありません。
この「質問できるのに、しない・できない」問題は、実はリアルの塾でも同じです。
「質問教室へ行って、先生に質問しなさいと促すのですが、質問しないで帰ってきちゃうんです」
という、親御さんからのご相談がなんと多いことか。
私は、こうお伝えしています:
「うちの子がここをわからないと言っていました。質問するように伝えたんですが、先生に話しかけるのが恥ずかしいみたいで…」と、塾に電話してください。
このひと手間だけで、塾の先生から子どもに声をかけてもらえる可能性がぐっと高まります。
リアルの通塾でもこうなのですから、通信教材の質問機能で「わからない」を解決できないのは明白です。
通信教材を利用する際は、外部の家庭教師やオンライン個人指導をスポット的に活用することで「わからない」を溜め込まない仕組みを作ることが大切です。
Mさんのご家庭のように、
「いつでも質問できる相手がいる」
という安心感が、子どもを前向きに、そして継続的に学びへと向かわせる鍵になります。
もうひとつの重要なポイントが、「誰の意志で受験を始めたのか?」という部分です。
Hくんのように、「友だちが受験するから」という理由で始めると、途中でのモチベーション維持が難しくなります。
特に
「あなたが中学受験したいって言ったでしょ?」
と責任を押し付けるような場面が出てくると、親子関係にも深刻なダメージを与えてしまいます。
子どもの「中学受験したい」の何気ない言葉に振り回されるのではなく、
✔ 家庭の方針としてどうするのか
✔ そのためにどんな準備をし、どこに頼るのか
✔ 万が一うまくいかないときの方針転換の余地を持っているか
こうした「大人の判断」で方針を決め、子どもを巻き込む形で進めることが、無理のない塾なし受験のポイントです。
・学習を“習慣”として生活に組み込める
・親が「教える」のではなく「環境を整える」ことに徹している
・「わからない」を溜め込まず、外部に助けを求められる
こうした要素が揃っていれば、塾に通わなくても中学受験にしっかり取り組むことが可能です。
「塾なし中学受験」を、“安いから”という理由だけで選ぶのはおすすめできません。
たしかに、中学受験塾の年間費用は、6年生になると100万円を超えることも珍しくありません。
それに比べれば、通信教材は割安です。
ですが、「安いから」「費用を抑えたいから」という“消去法”で選んでしまうと、のちのち「やっぱり無理だった」と行き詰まってしまうケースが少なくないのです。
通信教材も無料ではありません。
そして、毎月コンスタントに教材が届きます。
それを開封し、読み、取り組み、提出し、振り返る──
これを親子で継続するには、想像以上のエネルギーが必要です。
「塾なし中学受験」は、決して“コスト削減の手段”ではありません。
「子どもにとって」「家庭にとって」どの環境が一番合っているのか。
その視点で選ぶべきものです。
中学受験は、家庭にとって「教育」とは何かを深く考える、かけがえのない機会です。
私は、「教育」とは、親が子どもに手渡すことのできる、唯一の「財産」だと思っています。
みなさんは、どう考えますか?
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
もし、家庭内だけでは難しいと感じられることがありましたら、どうかひとりで抱え込まずにご相談ください。
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