こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
いま、低学年の授業を担当していて、改めて痛感することがあります。
「同じ数ずつ分けるってどういう意味?」
「半分って…つまりどうなること?」
「2倍にする…それってどういう式になるの?」
「同じ数ずつ」
「半分」
「2倍」
どれも、大人にとっては当たり前の言葉です。
しかしながら、これらの言葉が「よくわからない」と戸惑う子が、年々増えているのです。
これらは、塾のテキスト以前の「日常語彙」であり、生活の中で自然に身につけておくべきもののはずです。
いざ受験勉強が本格化すると、こうした基礎の語彙がぐらついている子ほど、伸び悩みや苦しさを抱えやすくなります。
なぜ、こんなことが起きているのでしょうか?
そして、子どもたちの成長に寄り添う私たちは、何ができるのでしょうか?
今回は、中学受験の「言葉の力」にフォーカスしてお伝えします。
中学受験の入試問題は、学校が「こういう子どもに入学してほしい」という「理想的な子ども像」を想定して作られているものです。
つまり「こういう問題を解ける子に入学してほしい」という問題が、入試問題なのです。
作問者は、日常的に本を読み、家族や友だちと会話をしながら自然に語彙や論理を身につけてきた子どもを前提にして問題を作成しているのではないでしょうか。
たとえば、算数の文章問題。
AくんとBくんが同じ数ずつのカードを持っています。
Bくんのカードの半分を、Aくんにあげたら、二人のカードの違いは12枚になりました。
AくんとBくんは、はじめにカードを何枚ずつ持っていたのでしょうか?
この文章を読んで、状況をイメージできる子は、実はごく一部なのです。
多くの子は、「同じ数ずつ」「半分」という言葉を正しく認識できないまま、文章をよく読まずに、12という数を使った計算式を適当に書き始めます。
「どうしてこの式になったの?」
と問いかけると
ほとんどのお子さんは、うつむきながら小さな声で
「よくわからなかったから、とりあえず書きました」
とつぶやきます。
これは、算数ができないのではありません。
子どもの 「言葉の力」が、作問者の期待するレベルまで届いていないのです。
(文章問題の答えは12枚ずつです)
実際に指導の現場でよく出会うのがこんな場面です。
低学年のお子さんだけの話ではありません。
中学1年生の英語の授業でも似たようなことがよくあります。
「You are not my classmate.」
私は生徒に尋ねました。
「この英文の主語は何?」
彼はためらわずに答えました。
「my」
生徒さんにとっては、「私」が主語なのだろうという認識でした。
しかし、英語では「my」は所有格、「私の」という意味です。
会話を交わしながら気づいたのはですが、その生徒さんは「私が(は)」と「私の」の違いがわからないまま使っているようなのです。
つまり、英語がわからないのではなく、日本語の理解が曖昧なまま学年が上がった結果なのかもしれません。
言葉はすべての学びの土台です。
それがぐらついていると、どの教科も難しく感じるのは当然です。
では、なぜ言葉の力が失われてしまうのでしょうか?
その背景には、社会や家庭環境の変化が深く関わっていると考えられます。
スマホやタブレットで流れてくるショート動画は、すぐに結論が提示され、短い時間で終わります。
「考える時間」が不要で、「待つ」経験もなく、次々と再生される動画を受動的に見ることで時間を消費します。
ショート動画そのものの影響もそうですし、ショート動画を長時間見ていることで、子どもの成長に必要な時間が失われることも危惧されます。
共働き家庭が増え、とにかく親御さんに時間と気持ちの余裕がありません。
親子の会話は
「宿題やった?」
「ごはん食べて。」
「早く寝なさい!」
といった命令的・単語的なものになりがちです。
本来、会話とは、言葉のやりとりが行われるべきものですが、一方的な命令になりがちで、家庭内では、お子さんが自分の気持ちを表現したり、状況を説明したりする言葉が発する機会が、ほぼ無いのが現状ではないでしょうか。
また、「勉強」というと、机に向かい鉛筆を持って取り組むものだと、多くの親御さんが誤解しています。
小さい頃からプリント学習やドリルばかりをこなしてきた子は、
「とにかく早く、正解を出せばいい」
という考え方が身についてしまい、初めて見る問題や長い文章、考えさせられる問題に出会うと
「だめだ、わからない。できない。」
と解くのを諦めてしまいます。
実際に「宿題は、やりました」と自信満々な小学5年生。
しかしながら、中身を見るとノートにびっしり解答が書いてあるのに、見事にすべて不正解。
「どうしてこういう式を立てたの?」
問いかけると、黙って下を向いてしまいます。
じっくり時間をかけて話を聞いてみると
「とにかく宿題をやらなくちゃと思って、よく読まずに適当に答えを書いた」
「答えを写した」
というケースも少なくありません。
※こういうときでも、叱りません。
「正直によく話してくれたね。ありがとう。」
と声をかけて、なぜこの宿題を出すのか、わからないと感じたときにはどうしたらよいのかを、ゆっくり伝えます。
一部の優秀層は、幼いころから親子で対話をし、本を読み、会話や物語を楽しみながら言葉の感覚を養っています。
語彙や論理的思考が十分に育ち、1万字超えの長文に取り組み、難関校に合格していく層です。
一方で、言葉に向き合う機会が少ないまま育ち、「うちの子は、勉強が得意ではないので、自己推薦書と面接だけで合格できる学校にしようかしら」と考えるご家庭も増えてきています。
「無理しない受験」を選択したい親御さんの気持ちは理解できなくも無いですが、この「言葉の習得の先送り」は、本当にお子さんのためになるのでしょうか?
その結果、学力層のますますの二極化が進みつつあるのも現実です。
言葉の力の差は、ただの成績の差ではありません。
将来、社会でどんな職業に就けるか、どれだけの選択肢を持てるかに直結します。
人口減少が進み、AIや自動化が加速する中、
「自分の考えを言葉で伝えられない人」
はますます不利になっていくと言われています。私は大袈裟な話ではないと考えます。
ここまで読んで、「じゃあ、うちでは何をすればいいの?」と思われた方もいるでしょう。
ここで大切なのは、勉強量やテクニックを増やすことではありません。
家庭でできるのは、以下のような環境づくりです。
「どうしてそう思ったの?」「他の言い方もあるかな?」など、問いかける。
ニュースを見ながら、親御さんとお子さんがお互いに感想を話したりする。親御さんがお子さんが読む本に興味を持ち「どんな本なの?教えて」と、その本の内容を、お子さんに聞いてみたりする。
「すぐに正解した子がエライ」のではなく、「考えた痕跡があるか」を見てあげる。
もし答えが間違っていたとしても、一生懸命考えたことを、褒めてあげる。
問題を解くときも、言葉を発するときも、お子さんを焦らせないこと。
「慌てなくていいよ」「ゆっくりでいいよ」と声をかける。
こうした積み重ねが、やがてお子さんの学びの底力になります。
中学受験の入試問題は、理想的な言葉の力を持つ子を前提に作られています。
しかし、現実にはそこが揺らいでいる子が多いのです。
そのギャップに気づいた今が、変えるチャンスです。
「早く正解する子」が成功するわけではありません。
「わからないことに向き合い、言葉で考え、言葉で伝える力」を育てることが、将来の財産になります。
家庭でできることから、ぜひ始めてみてください。
もし、「うちの子の場合、何から始めればいいかわからない」という方は、いつでもご相談ください。
2ndスクールオンラインは、お子さんの学びとご家庭のコミュニケーションをサポートします。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
もし、家庭内だけでは難しいと感じられることがありましたら、どうかひとりで抱え込まずにご相談ください。
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