中学受験の理系分野では、算数対策に焦点をあてられることが多く、理科は後回しになりがちです。
「とにかく算数に注力し、理科は6年生の秋からでも大丈夫!」
と言う塾があるのも事実です。
「理科は後回し」
本当にそれでよいのでしょうか。
私はその考えには賛成できません。
理科だって、他の教科同様に5年生までに基礎固めをして、6年生からは入試対策に専念できるよう準備すべきです。
理科の基礎固めとは、どのようなことをすればよいのでしょう?
基礎固めには
(1)興味関心を持つ。
(2)基礎的な用語を、必要に応じて暗記する。
(3)基礎問題を解いて、知識の定着度をチェックする。
このような学習プロセスが必要です。
理科には
「生物」
「地学」
「物理」
「化学」
の4分野があります。
この中でお子様がもっとも興味関心を持ちにくい単元は
「生物分野」の「植物」です。
他の3分野は、実験映像などをきっかけに、興味を持つことが多いです。「生物分野」は、動植物の分類と用語の習得が中心となります。
特に「植物」は、動いたりかわいいしぐさを見せたりしないので、子どもは興味関心を持ちにくいでしょう。
今回は、理科の中でも特に「植物」に興味関心を持つにはどうしたらよいか、
その方法をご紹介します。
「植物」の苦手を克服して
理科4分野の基礎をコンプリートできれば、偏差値55のマークが可能です。
この図は、サピックスの「ジュニア理科資料」と「知識の総完成」の内容をもとに、作成した植物の分類表です。
どうですか?
全然ピンときませんよね!
「分類」は、文字を見てもピンとこないものです。
ビジュアル的に
「ここと、ここが、異なる」
と納得する必要があります。
テキストにイラストや写真も載っていますが、モノクロイラストや植物の一部を切り取った写真では、ますますわかりません。
「植物」の苦手克服と知識習得の鉄板は
国立科学博物館の系統広場
です。
系統広場は、上野公園内 国立科学博物館(以下、”かはく”と言います)の地球館1階にある展示です。
部屋いっぱいに植物の分類と、それぞれの植物の標本を展示してあります。
イラストではなく、本物を見ることで
「ここと、ここが、異なる」
がわかり、
「なるほど、そうか!」
と得心できる場所なのです。
この後に紹介する写真は、私が”かはく”の展示物を撮影したものです。
(撮影不可の表示があるもの以外は、撮影できます)
写真を見ながら、この記事を読んで
「なるほど、そうか!」
と興味の扉が開いてくれたらうれしいです。
中学受験に取り組む5年生と保護者の皆さん。
今年は、ある意味「小学生最後の夏休み」ですよ。
なぜなら、6年生の夏休みは、通塾以外の外出はできませんから。
この夏休みに、国立科学博物館の特別展と常設展両方に足を運びましょう。
(展示:生命の花)
系統広場の入り口に
「生命の花」
という展示物があります。
生物における基本的な考え方を、音声と映像で教えてくれる展示です。
立ち止まってしっかり見てみましょう。
そして系統広場の外側の壁に、分類の方法を、「ハシボソガラス」を例に絵で示した展示があります。
図鑑の動植物名のところに書いてある
「界」「門」「網」「目」「科」「属」「種」
が、どういうことなのか、よくわかります。
(展示:生き物にに名前をつける)
この系統広場では、動植物を7つの「界」に分けています。
(展示:系統広場では7つの界に分けた)
このブログで取り上げている「植物の分類」は、中央左 濃い緑の部分です。
分類の方法は他にもたくさんあります。
分類があって、そこからそれぞれの生物が生まれたのではなく、多種多様な生物が存在しているものを、人間が都合よく分けたので、さまざまな分け方が存在するのです。
すっきり分けることができない例外も多数存在します。
中学受験では、この植物界を
に分けて、
種子で増えるものをさらに分けます。
はじめに、
種子では増えないもの
から見ていきましょう。
種子で増えないものはシダ類とコケ類です。
種子ではなく、胞子で子孫を増やします。
と、テキストに書いてあるところで
「シダを見たことある?」
と聞くと、
「ない」
という答えるお子様がほとんどですね。
「コケは?」
こちらはシダよりは認知されています。
「石にくっついている緑のやつ?」と。
シダはこちらです。
(展示:標本 コシダ シダ目 ウラジロ科))
この葉っぱを見せると
「あー 見たことあるかも」
となります。
「へぇー コケより草っぽい」
「花が咲かないの?」
いろいろな感想が飛び出します。
次は、種子で増えるものを見ていきましょう。
「種子植物」というので、
「種子で増えるもの」としましたが、身近な言葉では
「花が咲くもの」とも言い換えられます。
この「種子植物」は、大きく2つに分けられます。
「被子植物」と「裸子植物」です。
身近ではない「裸子植物」から見ていきましょう。
(展示:標本 裸子植物 ソテツ ソテツ目 ソテツ科)
こちらは、裸子植物「ソテツ」の標本です。
上部にあるのは、雌株の「大胞子葉」。
「大胞子葉」に4つ付いているものが種子です。
このように胚珠がむきだしになっているから
「裸子植物」といいます。
(胚珠が受粉後に種子となります)
また、裸子植物のほとんどは、風が花粉を運んで子孫を増やす「風媒花」です。
(花粉は、雄しべから出る粉状の細胞で、雌しべで受粉することで種子となります)
(展示:標本 裸子植物 スギ マツ目スギ科)
スギもソテツと同じく裸子植物。
辛い鼻炎症状をもたらすスギ花粉症のアレルゲンは、風にのって空気中に運ばれるスギ花粉です。
裸子植物にも「花」はありますが、綺麗な色の花びらはありません。
「まつぼっくり」(松かさ)は、茶色いので「実」に見えますが、「実」ではなく受粉したマツの「雌花」です。
種子植物の中では、裸子植物は地味な存在ですね。
でも、もしかしたら裸子植物のほうが自然の姿で、
被子植物が、必要に応じて派手になったのかもしれません。
子どもがお絵かきで描く「お花」
例えばチューリップ、サクラ、タンポポ、スイセンなど…
これらが被子植物です。
(展示:標本 双子葉植物ガクウツギ バラ目アジサイ科)
被子植物は2つに分類されます。
発芽したときのはじめの葉っぱ=子葉が「ふたば」になる
「双子葉植物(双子葉類)」
と
子葉が1枚でふたばにならない
「単子葉植物(単子葉類)」
です。
※私は、
たんしお(よ)食べる?
そうしよう!
と覚えました。
それぞれ、葉と根にも違いがあります。
双子葉植物の葉は、
葉脈が網状。
根は主根と側根があります。
単子葉植物の葉は、
葉脈が平行。
根はひげ根です。
”かはく”の系統広場で、標本をじっくり見比べてみてください。
(展示:標本 単子葉植物 コオニユリ ユリ目ユリ科)
被子植物の多くは、虫媒花または鳥媒花です。
胚珠が子房の中に入っているため、虫や鳥の力を借りて繁殖するのです。
(胚珠は受粉後に種子となり、子房は果実になります)
鳥や虫に注目してもらわないと、子孫を残すことができません。
だから色鮮やかな花弁(花びら)をもっているのです。
少し脱線しますが
「被子植物」と「裸子植物」
どちらも
ころもへん です。
誤って しめすへん を書いてしまい失点するお子様が後を絶たないので特筆しておきます!
いかがでしたでしょうか。
広い展示室の一部を撮った写真ですが、テキストのイラストに勝る本物の雰囲気が伝わったら嬉しいです。
欲をいえば、かはくで標本を見た後に、生息している本物の植物も見てほしいです。
都内では明治神宮の「杜」がおすすめです。
国立科学博物館には、物心つく前から通っています。
フーコーの振り子の前にしゃがんで、ずっと振り子の様子を眺めていた記憶があります。
フーコーの振り子の展示サイズから推測すると、当時の私は、3歳くらいでしょうか。
(3階から吹き抜けの階下に向けて撮ったフーコーの振り子)
幼い頃は、ただなんとなく展示を眺めていただけでした。
でも、大人になってからあらためて常設展を見ると、
「中学受験理科は全て、かはくで学べる!」
と確信しています。
私の中では「常設展>特別展」です。
1年間有効のリピーターズパスを購入して、
常設展には是非、何度も足を運んでください。
なぜならば、1日ですべてのフロアを見るのは無理だからです。
立体の展示物だけでなく、展示ごとにテキストで表示されている解説も重要なので、1つのフロアを、時間をかけてじっくりと見てほしいです。
時間の余裕がないときに、焦って展示を周ろうとすると、フロア広さと階段やエレベータの昇降で疲れてしまい、お子様の機嫌が悪くなります。
展示室内は飲食禁止ですので、食堂やカフェテリアに行き着くまでに、おなかがすいたお子様がますます不機嫌になります。
それを見た親御さまが激怒。
お子様連れで、電車に乗って出かけること自体、親御さまにとっては相当な負担ですからね。
親御さまも堪忍袋の緒が切れてしまうのでしょう。
冗談ではなく、
館内で本当によく見かけるんですよ、親子喧嘩を。
「もう、あんたなんて連れてこないからね!」
「そんなわがまま言うなら、もう帰るよ!」
日本一の科学館、”かはく”が、親子の悲しい思い出になりませんように。
とにかく時間と心の余裕をもって、親御さまも一緒に楽しむ気持ちでお出かけください。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
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