こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
今、教育の現場で、私が深刻に感じていることがあります。
それは「子どもの言葉が危ない」ということです。
私は中学受験の指導を長く続けてきましたが、ここ数年で、特に低学年の子どもたちの日本語基礎力が急速に弱っていることに危機感を抱いています。
「読解力がない」という話はよく耳にしますが、問題はもっと根っこのところにあり、そして深刻です。
語彙力の不足以前に、「てにをは」が正しく使えない、基本的な助詞が欠けた会話しかできないお子さんが増えているのです。
そうしたお子さんの現状に向き合う中で、中高生ボランティアと共に「読み聞かせ動画」を制作し、虐待・DVの被害に苦しむ親子と女性のための保護シェルターを運営する『特定非営利活動法人オリーブの家』を通じて、活用していただく取り組みを始めました。
ちょうど本日、「オリーブの家」から、この動画提供のプレスリリースが出されました。
↓プレスリリースはこちらからご覧になれます
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000166149.html
今回のブログでは、なぜ「読み聞かせ動画」を中高生とともに作り、シングルマザー家庭のお子さんへ届けようと考えたのか、その背景をお伝えします。
低学年の算数の授業で、生徒に
「あめが12個あります。4人で同じ数ずつ分けると、1人分は何こになりますか?」
と問いかけるとします。
すると、「同じ数ずつ」「1人あたり」の意味がわからないお子さんが少なくないのです。
他にも「合わせていくつ」「違いはいくつ」といった算数の文章題の基本語彙さえ理解できない子どもたちもめずらしくありません。
これは算数の苦手意識の前に、日本語の理解が追いついていない証拠です。
授業中に先生が発する言葉の多くを、お子さんはそのまま通り過ぎてしまっているのではないかと思うほどです。
中学受験の文章問題においても同様です。
助詞の意味が曖昧ゆえに、設問の意味がまったく読み取れていないケースが少なくありません。
何を問われているのか把握できないから、文章題に登場する数字を使って、なんとなく足したり引いたりかけたり割ったり…
いい加減な立式をすることになるのです。
「AはBである」と「AのBである」の違いが曖昧。
「Cをする」と「Cがする」の違いがわからない。
「Cをする」も「Cがする」も、助詞が消えて「Cする」と言ってしまう。
おおげさな話ではありません。お子さんは、普段の生活で実際にそういう言葉の使い方をしています。
つまり、家庭内での会話における質の低下が、お子さんの日本語力に大きく影響しているのです。
家庭内での会話の質が、どうして低下してしまったのでしょうか。
「質が低下している」と、ネガティブな書き方をしていますが、決して、親御さんが悪いのではありません。
親御さんが忙しすぎるのです。
共働き家庭では、朝から晩まで仕事と家事に追われ、お子さんと落ち着いて話す時間を持つことは簡単ではありません。
実際によく聞くのは、
「宿題やった?」
「連絡帳出して!」
といった、助詞がほとんど使われない短い言葉のやり取りです。
これらの言葉が、お子さんにとって日常の言葉のモデルになっています。
お子さんも
「ママ、水」
「おなかすいた」
「のどかわいた」
…よく使っていますよね。
さらに深刻なのは、幼少期の読み聞かせの習慣がほとんどなくなっていることです。
親御さんが絵本を開き、登場人物の声をまねしながら読んだり、物語の続きを一緒に想像したりする体験は、言葉のリズムや助詞の使い方を自然に身につける大切な機会です。
それが失われてしまった今、お子さんは“正しい日本語”を学ぶ場を得られずにいるのです。
保育園の先生ですら、「行事の準備や事務仕事に追われて、紙芝居や絵本を読む時間がとれない」と口にします。
教育の現場から「物語にふれあう時間」が削られている現実があります。
今回、読み聞かせ動画を活用していただく特定非営利活動法人オリーブの家は、シングルマザー家庭を支援する活動を続けています。
DVや生活困難のために親子で保護シェルターを利用するケースは珍しくありません。
そうした家庭では、親御さんが日々の生活に追われ、お子さんと丁寧に会話する時間を持つことがさらに難しいのです。
しかし、この問題はシェルターに限った話ではありません。
比較的安定した家庭であっても、親子の会話が「単語の投げ合い」に近くなり、お子さんの言語力が育たないという現象は広がっています。
だからこそ、社会全体で「子どもの言葉を育てる」取り組みが必要ではないでしょうか。
そこで私たちは、中高生とともに「読み聞かせ動画」を作るボランティアを企画しました。
この活動の目的は二つあります。
一つは、お子さんたちに言葉のリズムを届けること。プロの声優ではなく、等身大の中高生の声だからこそ、素直に耳に入るものがあります。
もう一つは、ボランティアに参加した中高生自身が「自分の活動が社会に役立っている」と実感することです。名前が表に出ることはなくても、「自分が読んだ絵本が、どこかのお子さんを笑顔にしている」と思える体験は、彼らの成長に大きな意味を持ちます。
実際に活動に参加した高校生は、
「目の前に子どもたちがいるわけではないけれど、聴いてくれる子どもたちを想像しながら声を吹き込みました。’」
「子どもたちに喜んでもらえるようにと考えながら絵を描きました。」
「自分たちが制作した動画が誰かの役に立てると感じられて嬉しい」
と感想を話してくれました。
私は、教育は単なる学力の向上ではなく、生きるための言葉を子どもたちへ渡す営みだと考えています。
親子の会話、先生とのやり取り、絵本を読み聞かせる時間——それらの積み重ねが、子どもたちの思考力や人間関係の基盤を形づくります。
物やお金と違い、教育は使っても減ることはありません。むしろ次の世代へと引き継がれ、社会全体を豊かにしていきます。
教育は、大人が子どもへ渡せる唯一の財産。
この言葉を、私は活動の軸に据えています。
だからこそ中高生が、特定非営利活動法人(NPO)を通じて親子シェルターのお子さんに本の読み聞かせ動画を届ける試みは、単なるボランティアではなく、未来への贈り物だと信じています。
子どもたちの日本語力の低下は、家庭や学校だけでは解決できない課題です。
親子の会話が乏しくなり、読み聞かせの時間が削られる現状を前に、保護者だけでなく、社会全体が新しい方法を探さなければなりません。
今回、中高生ボランティアが制作した読み聞かせ動画を、親子シェルターを通じてシングルマザー家庭に届けることになりました。
これは小さな取り組みかもしれません。しかし、「教育は、大人が子どもへ渡せる唯一の財産。」という信念のもとに続けていくことで、確実にお子さんの未来につながっていきます。
今回のプレスリリースをきっかけに、社会全体で「子どもの言葉」を支える流れが広がればと願っています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
少しでも親御さんのお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
「言葉の力」は、学力や受験に直結するだけでなく、日常の会話や人間関係の基盤にもなります。
もし、家庭内だけでは難しいと感じられることがありましたら、どうかひとりで抱え込まずにご相談ください。
2ndスクールオンラインでは、
月1回の保護者カウンセリングつきで、お子様の学びとご家庭のコミュニケーションをサポートしています。
なお、学年途中での転塾は原則としておすすめしておりません。
現在お通いの中学受験塾のカリキュラムを尊重しながら、
集団授業では理解を深めにくい単元を、1対1で丁寧に指導いたします。
お通いの塾と併用する形で、ご利用ください。
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