こんにちは
2ndスクールオンライン 教室長の奥田みほです。
夏は、受験生にとっての「天王山」。
――とはよく言われますが、そもそも「天王山」って何のことでしょう?
これは、戦国時代の「山崎の戦い」で羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)が明智光秀を打ち破った、歴史的に重要な場所を指しています。
そこから転じて、
「勝負の分かれ目となる重要な局面」
という意味で使われるようになったのです。
たしかに、受験生にとって、夏はまさにその天王山。
決して安くはない夏期講習の受講料。毎日の塾弁づくりと送迎。テキストと宿題の管理。
「中学受験で人生が決まる」と言わんばかりに、保護者の方々が全力でお子さんを支えていることでしょう。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみてください。
本当に「中学受験で人生が決まる」のでしょうか?
たしかに、「夏こそ天王山」――これが最後のチャンスだと自分を追い込み、真剣に受験勉強に取り組むという姿勢は、受験において一定の成果を上げることがあります。
けれど、それが可能なのは、ある程度自分で自分を律することのできる年齢、思春期以降でしょうか。たとえば高校受験や大学受験の段階です。
中学受験をするのは、まだ小学生です。
「これが人生を左右する」「落ちたら終わりだ」などという言葉を、真正面から受け止めて、自分を追い込んで頑張ることは、難しいです。
精神的な成長段階でまだそこまで至らないからです。
にもかかわらず、
「今やらなかったら、受かるはずないよ」
「この学校に落ちたら、中学受験なんて意味がない」
そんな言葉を、親御さんがつい口にしてしまうことがあります。
もちろん、意図してお子さんを傷つけようとしているわけではないでしょう。
けれど、親御さんの不安が無意識のうちに子どもにのしかかり、結果として、お子さんが本来持っているはずの力を発揮できなくなってしまいます。
実際、私たちのもとには毎年、こうしたプレッシャーによって心が折れてしまったお子さんのご相談が届きます。
「塾に行きたくない」
「模試の前日は、なかなか眠れない」
「親に怒られるから、結果を見せたくない」
勉強そのものが嫌になってしまい、学校にも行けなくなる──そんなケースも決して珍しくはありません。
そして、こうした不安や焦りを助長する要因の一つが、「偏差値」なのです。
数字という“目に見える指標”は、つい信じたくなります。
でも、その偏差値は本当に“正しさ”を表しているのでしょうか?
私は現在、土日と学校の長期休暇期間を中心に、中高生を対象としたボランティア活動を企画・運営しています。
大学見学や地域貢献をテーマにしたその活動には、公立中学・公立高校・私立大学附属中高一貫校・私立中高一貫進学校・インターナショナルスクールなど、さまざまな学校に通う生徒さんたちが自主的に参加してくれています。
活動を通して日々感じるのは、偏差値表の「偏差値」や「知名度」にとらわれず、自分のペースでのびのびと学び、内面から輝いている生徒さんが本当にたくさんいるということです。
彼らは、自分の意見を堂々と語り、仲間と協力して物事を成し遂げながら、多くの経験を積んでいます。
たしかに、偏差値が高い学校は「有名校」。多くの受験生が集まり、競争も激しくなります。
けれども、「偏差値が高い=優秀」「偏差値が低い=ダメ」といった見方は、あまりにも短絡的です。
中学受験で第一志望校に合格できるのは、4人に1人とも言われています。
つまり、4人のうち3人は、第一志望以外の学校に進学しているということになります。
それでも、多くの生徒が進学先を前向きに受け入れ、自ら学びを深めていくことで、たしかな自信と力を育んでいます。
視野を広げ、仲間とともに経験を重ねながら、今いる環境のなかで力強く成長しているのです。
どの学校に進んだかよりも、その環境をどう生かすか。
その姿勢こそが、受験後の成長を大きく左右するのだと、私は、中高生のボランティア活動を通して実感しています。
↑中高生向けボランティア活動のお申し込みはこちらから。
活動後のリフレクションにて、自らに向き合い、大学受験の志望理由書へつなげていきます。
模試の結果が返ってくるたびに、保護者の方からこう尋ねられることがあります。
「どのくらいの偏差値があれば合格できるのでしょうか?」
もちろん、目安として偏差値を活用すること自体は悪いことではありません。
でも、偏差値はあくまで相対的なもの。受験する母集団や出題傾向によって、上下します。
そして何より、その数字に一喜一憂する親御さんの姿を、お子さんは非常によく見ています。
たとえば、こういうお子さんがいました。 模試の偏差値が前回より2ポイント下がったときに、「お母さん、今日は黙ったままで…」と打ち明けてくれた子。
「また叱られる」と不安で、小テストの結果をリュックにしまったまま、親御さんに見せることができない子。
「模試やテストは、受けた直後に答え合わせをして、できなかったところに気づくためのものだよ」
と伝えても、
「怒られたくない」
という気持ちが先に立って、心のブレーキがかかってしまう。
テスト結果を“成長のための材料”ではなく、“怒られる理由”と捉えてしまっているのです。
そして、模試や月例テストの偏差値が出るたびに、顔を曇らせる子は少なくありません。
数字を見た瞬間に、表情が固まり、声が小さくなる。
「これじゃダメって思われるんじゃないか」
そんな不安が、言葉にしなくても伝わってきます。
偏差値は、受験における指標の一つです。 でも、それは「学び」の価値そのものを表しているわけではありません。
どんなふうに学んだか。どこでつまずいて、どう立ち上がったか。
そういう「中身」は、数字には出てきません。
偏差値がちょっと上がった。すごいね。
そうなんだ、家では設問を声に出して読むようにしているんだね。
偏差値がちょっと下がっちゃった。悔しいね。
でも、よく見たら、解き方は理解しているよね。この間違いならば、たくさん問題を解くうちに、安定して得点できるようになるよ。
偏差値が上がった、下がった、その具体的な内容はどうなのか、その状態にたどりつくまでに何を感じて、どんな努力をしたか――
そういうところに目を向けてあげるのが、大人の役割だと思うのです。
受験は、ゴールじゃなくて通過点。
偏差値は、学びのすべてを表しているわけではありません。
目の前の数字ばかりを気にして、本人の努力や変化を見落としてしまったら、本末転倒です。
数字を“信じすぎない”姿勢も、保護者にとって大切な受験力のひとつ。
偏差値表にばかり目を奪われず、その奥にあるお子さんの変化や葛藤、がんばりに、ぜひ目を向けてください。
中学受験は、親子にとって大きなチャレンジです。
だからこそ、親御さんの不安や焦りが生まれるのは、当然のことだと思います。
ただ、その気持ちが強くなりすぎると、どうしても
「今すぐ結果を出さなきゃ」
「偏差値を上げなきゃ」
と、目の前の数字に心を支配されてしまう。
そんなときこそ、思い出してほしいのです。
【この受験を通して、お子さんにどんな力を育んでほしいのか】
【合格だけをゴールにするのではなく、その先にある学びや成長に目を向けることはできないか】
子どもたちは、大人が思っている以上に、親の言葉や表情に敏感です。
そして、自分の頑張りをちゃんと見てくれている、受け止めてくれていると感じられたとき、目に見えて表情がやわらぎます。自信がにじみ出てきます。学ぶ姿勢が変わってきます。
偏差値という数字を信じすぎるのではなく、
日々、努力しているお子さんの姿を信じることに意識を向けていただきたいのです。
成績が上がるように信じる のではありません。
志望校に合格できるように信じる のではありません。
お子さん自身に、「自分のために努力して、自分のために課題を解決していく力」「よりよく生きる力」が備わっているということを信じていただきたいのです。
そしてもし、どうしても気持ちが苦しくなったときは、無理をしないでください。
信頼できる第三者に、少しだけ気持ちをこぼしてみてください。
受験をともに走る親だからこそ、孤立せず、ゆるやかにつながりながら前に進んでいけたら──そう願っています。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
少しでも皆さまのお役に立てたらと、精一杯心を込めて書きました。
もし、家庭内だけでは難しいと感じられることがありましたら、どうかひとりで抱え込まずにご相談ください。
2ndスクールオンラインでは、
月1回の保護者カウンセリングつきで、お子様の学びとご家庭のコミュニケーションをサポートしています。
なお、学年途中での転塾は原則としておすすめしておりません。
現在お通いの中学受験塾のカリキュラムを尊重しながら、
集団授業では理解を深めにくい単元を、1対1で丁寧に指導いたします。
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